お知らせ
2021.09.22研究会
第6回研究会 長津一史(東洋大学社会学部)「気仙沼とインドネシアーマグロをめぐる移動社会史の素描」
内容
宮城県気仙沼市はインドネシアとの関係がたいへん深い。同国の青年は、30年以上前から気仙沼を拠点とする遠洋・近海マグロ漁船等に乗り、市の基幹産業である漁業を支えてきた。現在、遠洋マグロ船の船員では、たとえば23人中19人がインドネシア人、4人が日本人と、乗員の3分の2以上をインドネシア人が占めている。東日本大震災以後は、水産加工業等で技能実習生として働くインドネシア人が増えた。2018年、技能実習生の人口は200人強になった。一時的に滞在する漁船員をあわせると、同市に滞在するインドネシア人の数は1000人をゆうに越える。人口約6万の同市で、インドネシア人の存在はきわだっている。
気仙沼の人びとは、産業以外でも、インドネシアと独自の関係を紡いできた。2002年には、商工会議所が夏の港まつりの一環としてインドネシア・パレード(初期はバリ・パレード)を企画、2011年に震災で中止を余儀なくされたものの、翌年には再開され、2019年には第17回を数えた。パレードには多くのインドネシア人技能実習生が参加。またほぼ毎年、在京インドネシア大使が臨席する。こうした経緯があって、東日本大震災後の2011年6月には当時のインドネシア大統領ユドヨノが仮設住宅に住むパレード主催者を訪問。その後、インドネシア政府は復興資金として20万ドルを市に寄付した。市はこの予算を市立図書館の再建にあて、同館に「ユドヨノ友好こども館」を付設した。
本トークでは、こうした気仙沼とインドネシアとの交流史、インドネシアの技能実習生と船員の就労状況や経歴をまず概観する。そのうえで、こうしたことを調べることで、何をどのように探ることができそうなのか、水産業(とくにマグロ)をめぐる移動の社会史という観点から展望してみたい。